2016.07.29 Friday
2013.12.19 Thursday
南相馬 菜の花プロジェクト ―「届けみんなのこころ、よみがえれ、命めぐる大地」−
外山です。
先日、チェルノブイリ救援・中部の河田昌東さんとお会いする機会があり、福島県南相馬市の菜の花プロジェクトのお話を伺いました。これ は、チェルノブイリ原発事故後に、チェルノブイリ救援・中部がウクライナのナロジチ地区で行ってきた、農地再生プロジェクトの福島版といえるものです。
ウクライナのナロジチ地区でのプロジェクトの3つの柱
· 土壌浄化:菜の花は、土壌中のセシウムとストロンチウムを吸収する能力が最も高いといわれている植物の一つです。この能力を利用して、汚染された土壌から放射性物質の除去を目指しました。しかし、実際には1年にせいぜい5%ぐらいしか浄化できない事がわかりました。この事は残念だったのですが、菜の花を栽培した直後に植えた作物は、汚染が大幅に減少する事が発見されました。
· バイオディーゼル:農地が放置されているのは、土壌が放射能で汚染されていることだけでなく、畑を耕すトラクターの燃料が買えないということも理由の一つです。そこで、菜種油をBDF(バイオディーゼル油)に変えてトラクターの燃料に使用する事にしました。菜種油からBDFを製造する中で、菜種油には、放射能は全く含まれないと言う事が、実用的な量で確認されました。
· バイオガス:菜の花の根から吸収された放射能は、葉、茎、根、さや等のバイオマスと菜種油の搾りかすである菜種の皮に残ります。そのまま処分しようとすると、かさばって大変ですので、かさを減らす必要があります。そこで、バイオマスや搾りかすを発酵させてメタンガスを取り出します。ガスには、セシウムやストロンチウムなどの放射性物質は含まれませんので、燃料として利用できます。そして、メタンガスを取り出した後には、液肥が残ります(汚染されているので肥料としては使えません)。ここから、更に水分を蒸発させるなどして容量を減らし、低レベル廃棄物として廃棄します。
福島では
· 土壌浄化:南相馬は、大豆の生産が盛んな地域でした。しかし、大豆には放射能が移行しやすいので、生産しても売る事が出来ません(政府の基準値以下であっても買い手が付かないか、安く買い叩かれる)。幸い、菜の花は、秋に撒き春に収穫しますが、大豆は春に撒き秋に収穫するので、栽培時期が被りません。そこで、菜の花と大豆を交互に植える事によって、大豆の生産を復興させます。
· 未精製の菜種油:日本では、燃料が不足していて、農地が放置されているわけではありません。また、ウクライナでの経験から、菜種油は汚染されない事が確認されています。そこで、菜種油を食用として生産します。未精製の菜種油には、抗酸化物質(キャノローラなど)が多く含まれ、健康に有用なので、これを新たな特産品として育てていきます。当面は、近県の製油所で菜種油を絞ってもらいますが、製油工場を建設し、地元で栽培から生産まで出来るようにする予定です。
· バイオガス:ウクライナと同様にバイオガスを製造し、原発、化石燃料に頼らないエネルギーを創出します。
2013年秋に、南相馬の15町歩の畑に菜の花が作付けされました。しかし、収穫に必要な汎用コンバインは、まだ持っていませんので、春までに調達する必要があります。今後、汎用コンバイン購入や搾油工場建設、バイオガス装置建設など、大きな課題があります。チェルノブイリ救援・中部では、この為の資金援助を広く求めています。
名古屋生活クラブとしても、以前から東北地方の復興を重視しており、放射能で汚染されてしまった地域の人に対して、安易に「避難するべきだ」とか、「汚染された土地で食べ物を作るべきではない」という対応はしてきていません。事情があって避難できない人、現実を受け入れて、この地域で生きていく事を決心した人をサポートする事も重要だと考えています。
このプロジェクトは、南相馬で暮らしていく人たちを応援するプロジェクトであり、名古屋生活クラブの考え方に合致していますので、今後、積極的に関わっていきます。まずは、1月5週に、会員様から募金を募らせていただきます。その後、菜種油などの生産物も、名古屋生活クラブで取り扱って行く予定です。
名古屋生活クラブの会員様以外の方も、下記のアドレスで、チェルノブイリ救援・中部に直接募金を行う事が出来ます。
チェルノブイリ救援・中部 支援募金・活動のお願い